About

大澤研究室のミッション

誰しもがドラえもんと認めたくなるような、皆に愛されるドラえもんを、たくさんの人との協力によってつくります。そしてともにドラえもんをつくるというビジョンにより、たくさんの人を幸せにします。当然、完成したドラえもんは人を幸せにしますが、ドラえもんをつくる過程も関わった仲間たちを幸せにします。

人とロボットが共存する未来のための技術開発

人とロボットが関わっていくには、現在の人工知能技術を更に発展させる必要があります。我々はHuman-Agent Interaction (HAI)と呼ばれる研究領域を主軸に、人とロボットが共存する未来に挑みます。

一人ひとりがスターとなるための人材教育

ドラえもんをつくることを通して、人が成長し幸せになっていく仕組みづくりを実現します。我々は、関与する一人ひとりが各々の価値軸でスターになっていくための教育を担います。大澤研究室では、独自の教育システムを構築し、これを実現します。

ネットワーク型組織の形成と拡大

真の意味で「ともにドラえもんをつくる」を実現すために、既存のトップダウン型組織体系ではなく、ネットワークとしての組織形態を作ります。これは、誰しもがリーダーになり、各々がもつ価値軸を最大化させる仕組みづくりでもあります。また、このネットワークは大澤研究室内で留めず、日本中、世界中に広げていくことを目指します。
 
 

Human-Agent Interaction (HAI)

今のAIは人と関わるのが苦手

現代のAIの中心的な技術は、ディープラーニングといえます。ただしディープラーニングは、大量のデータ、大量の計算機資源、大量の時間を必要としています。
ディープラーニングと人の学習方法は大きく異なっています。人間は少ないデータから学習し、想像力を働かせて、幅広い物事に対応が可能ですが、現状のディープラーニングでは、大量のデータを必要とする点で、汎用的なアプローチが難しい側面があります。また、ディープラーニングを、無理に人のように学習させようとしても、性能を下げてしまう結果に繋がりかねません。結果、現状のディープラーニングは個々人との関わり方を人間のように学び、コミュニケーションを取ることがが苦手といえます。
ディープラーニングの研究では、学習量を少なくするための取り組みなど、改良が世界的に取り組まれていますが、人間のように幅広く対応可能なシステムの社会実装という点では技術進展をまたざるを得ない状況です。
では、人と関わるAIは遠い未来の話なのでしょうか?

人と関わることで技術的なハードルは下がる

私たちが取り組むHuman-Agent Interaction (HAI)の研究は、人と関わることでむしろ技術的ハードルを下げることができます。HAIとはいったいどのようなものなのか、簡単にご説明します。
HAIは、人とAI(ロボット)を一体のシステムとして捉え、その全体を最適化する研究アプローチと大澤は捉えています。
豊橋技術科学大学の岡田美智男先生の「弱いロボット」の研究を例に説明します。
ショッピングモールのゴミをなくすという課題を、「人(客を想定)」「ロボット(AI)」「HAI」のそれぞれで解決する場合を考えます。
  • 人で解決する場合
    • 「ゴミを拾ってください」などとお願いすることになります。これはなかなかお願いを聞いてもらえない場合も多いです。
  • ロボットで解決する場合
    • 技術的なハードルがかなり高いです。(ゴミとゴミでないものを認識し、人に危険が及ばないように安全に移動し、アームを制御してあらゆる形状のゴミをゴミ箱に捨てる。)
  • HAIで解決する場合
    • ゴミを拾う能力のない、ゴミ箱型のロボットを作る。(ゴミを必死に拾おうとするロボットを見て、周りにいた人がつい拾ってしまう)
人だけで最適化しようとしても、ロボットだけで最適化しようとしてもたどり着かなかった、簡単かつ確実にタスクをこなせる方法が、人とロボットが協力するという設定の上で最適化することでみつかるいい例だと思います。

HAIのコア技術

HAIのコア技術は、人工物に対して他者モデルを想定させることであると考えています。
他者モデルとは、簡単に言えば心のモデルといえるでしょう。ざっくり言うと、他者モデルを想定しない他者はたんなる「道具」であり、他者モデルを想定した他者は「仲間」のような存在になります。ドラえもんは人工物ですが、のび太はドラえもんというロボットのなかに心を想定し、彼を仲間としてみています。
人がある他者に他者モデルを想定する場合と、想定していない場合とでは、関わり方が大きく変化します。この人間側の変化を利用して、人とAI(ロボット)との全体として最適な状態をデザインすることができると考えられます。

他者モデルを想定するとき=意図を感じたとき

人は、他者が意図に従って動いていると感じたとき、同時に他者モデルを想定することが既存研究で分かっています。
ゴミ箱型ロボットに対し、「かわいそうだから助けてあげたい」と思うのは、ゴミ箱型ロボットを意図スタンスでとらえているからです。ゴミ箱型ロボットが、ゴミの前でモゾモゾしている姿に「ゴミを拾いたい」という意図を人は直感的に感じるため、ゴミ箱型ロボットに心を感じ取って、「かわいそう」「助けてあげたい」という気持ちが呼び起こされるわけです。こうした意図スタンスで見ることができるようにうまくデザインされているのが、ゴミ箱型ロボットです。

日本とHAI

日本は、HAI分野において世界を牽引しています。
HAIの国際会議は、多くの年で採択された論文の過半数が日本の論文という状況です。日本から発進した研究領域であることもありますが、そもそもこの分野は、日本的な発想がとくに生きる研究領域だからといえるかもしれません。
国民性、文化、歴史、宗教など、様々な観点でHAI的である思える点が日本には存在しているように思えます。そして日本のSFも、人間とさまざまなものが共存するストーリーが多く描かれ、人気を得ていた印象があります。私たちにとって、その筆頭が「ドラえもん」なのです。
「ドラえもん」を当たり前のようにみてきた私たちの感性があるからこそできる研究があるとすれば、素敵ですよね。
 
 

我々が目指すドラえもんとは

出発点は子供の夢

大澤研究室を主宰する大澤正彦の夢は、ドラえもんをつくることです。記憶がないくらい小さい頃から、ドラえもんをつくることを考えて生きてきました。どうすればできるのか、必死で考え続けた今いえることは、ドラえもんはたくさんの人からの協力を得て、みんなで協力してつくらなければならないということです。みんなでドラえもんをつくることを追求した現在の形が、この大澤研究室ともいえます。

ドラえもんの定義

ドラえもんに対して、どんなイメージをもっているでしょうか。「便利な道具をポケットから出してくれる」「未来からきたロボット」「のび太の友達」など、さまざまなイメージをもっていると思います。
ドラえもんをつくるには、まず「ドラえもん」を定義しなければなりません。ただしこれは極めて慎重に決定する必要がありました。不用意で自分勝手な定義を主張してしまうと、それが誰かのドラえもん像を否定することにもなりかねないからです。
誰もが認めてくれるドラえもんの定義を考えた結果、たどり着いたのは「 みんながドラえもんと認めてくれたら、それがドラえもん。」という定義です。
みんなにドラえもんとして認めてもらうためには、多くのの技術的進歩が必要です。同時に社会全体で、我々が、AIやロボットを受け入れる準備をしなければなりません。この定義を基に、大澤研究室では、さまざまな立場の人と一緒に、ドラえもん作りに取り組んでいきたいと考えています。

大澤研究室の取り組み

多種多様なドラえもんに期待する機能がある中で、大澤研究室が中心的に開発している機能は、目の前にいる一人ひとりに、とことん向き合い、寄り添い、相互適応していく機能です。この技術については、(HAIとは)で詳しく説明しています。
ドラえもんの四次元ポケットなどのひみつ道具はどうでしょう。実は大澤研究室は、国内外のたくさんの方々との繋がりがあり、その中にはひみつ道具のようにも思える夢の技術を開発している仲間がいます。大澤研究室で全てを実現できませんが、世界中の仲間たちとの活動が集大成として集まる未来を目指しているのです。仲間たちがつくったひみつ道具を、完成したドラえもんのポケットから取り出す未来に向けて、今日も研究に取り組んでいます。